文字をデザインする。人をデザインする。「生きる」をデザインする。デザイナー・ 防災士 沖本可奈さんインタビュー。
香芝市商工会女性部立ち上げメンバーであり、副部長の沖本可奈さんに、多彩な活動と人 生観をお伺いしました。
(取材・文=藤城美幸 撮影=村岡香林・乾佳子)
ゼロから新しい何かをつくって、周りの人が喜ぶ顔を見るのが幸せ
―― 幅広い活動をされていますね。
沖本可奈(以下、沖本):肩書は“デザイナー・防災士”ですが、どこでどんな活動をしていても「私は私だな」と思っています。活動のコンセプトは3つ。名刺の裏に書いてある 『文字をデザインする。人をデザインする。「生きる」をデザインする。』です。節操なく活動してますが(笑)この3つに当てはまらない活動はしません。今は、商工会の活動の他に、地域団体の立ち上げや社会教育委員、今年は香芝市市制施行30周年実行委員長など、垣根のない活動をさせていただいています。
―― 多様な活動をされる中で、一番楽しいと思うことは何ですか?
沖本:周りにいる人から「あれがない」「これが困っている」という話を聞くと「じゃあ、 こうしたら?」「ないなら作ろうよ!」とゼロから何かをつくるのが得意なんです。自分がつくった物に対して、誰かがとても喜んでくれるのがなにより嬉しいですね。つくった後は育てるのが得意な人に育ててもらいます。同じ場所で育て続けるのはあまり得意ではないので(笑)。
――人生のデザイナーですね。
沖本:「人の命には限りがある」という考えが私の根本にあります。個人が地球にいられるのもわずか数十年、いままでもこれからも、人が代わりながら喜怒哀楽の人生が繰り返されている。だから、「私がいなくなった後でも、誰かの為になるものを創りたい」と考えています。
――利他の精神ですね。何か人生観が変わるような体験をされたのですか?
沖本:幼少の頃から感受性は強かったようです。すべての生命が愛おしく、人間だけが偉いのではなく、地球上に存在する動物も植物もみな同じだと思っています。ちなみに動物のお世話、植物のお世話はめっぽう苦手です(笑)。また、大切な人の突然の死に出遭うことも何度かありましたが、「泣いても失われた生命は戻らない。私が前を向いて笑っている方がその人たちが喜ぶはず」と自然に思うようになりました。
――つらい経験も乗り越えて来られたのですね。
沖本:すべての経験に価値がある、無駄な経験は何もない、と考えています。また、しんどい経験こそ自分が成長する絶好のチャンスととらえています。もちろん人間なので一旦は凹むのですが、凹む時間も期限を決めています。「命には終わりがある。その間に自分に何ができるだろう」と実験と検証をしている気分です。つらくて泣くこともありますが、子供の頃から、その後すぐに「よし!ここからモーレツダッシュだ!」と内省とスタートを繰り返しています。
――まさしく『「生きる」をデザインする』ですね。
沖本:10年前の東日本大震災も人生観に影響しています。香芝に住んで20年位になります が、出身地が福島なんです。震災の時は出産したばかりだったこともあり、何もできませんでした。福島は原発問題など「10年前に始まって今も続いている」様々なことがあります。人が全くいなくなった町もあり、帰省する度に「町は人がいなければ町じゃない」という感覚が脳裏に刻まれ続けています。
――繊細な感性を持つ沖本さんが一層「生きる」に向き合ったのですね。
沖本:あれから、街角で立ち話している全く知らない人の姿を眺めるだけでも「そこに人がいる」だけで幸せを感じています。ご高齢の方がゆっくりした足取りで歩いている姿には「今まで」を子供たちの姿には「未来」を感じます。きっと「終わりのある生命を生きる」を考えていくことが、私に課せられた使命なのだと思います。
沖本可奈プロフィール
WritingrDesigner代表。香芝市商工会女性部副部長。起業女性ポータルサイト 「SoMe(わたしらしい)」企画運営。地域団体「香芝子どもプロジェクト」代表。香 芝市男女共同参画推進委員会委員。香芝市社会教育委員。デザイナーで防災士。酸素 を吸って二酸化炭素を吐いている生き物です。