香芝を走るお魚電車「伊勢志摩お魚図鑑」について
Hello, World! ナベです。
お正月に食べるお節料理は、もともとお正月に火を使わないように日持ちする物が多いそうです。
でも最近はお正月でも開いてるお店が多くなってきました。
時代とともに色々と変わりますが、今日はそんな昔の名残を感じる列車のお話です。
香芝市の踏切を通過する1編成の電車です。
よく見ると、先頭の1両だけ何やらラッピングがされています。
この列車のお話をするには、今より少し昔のお話から始まります。
今でこそ物流のメインはトラックなど自動車による所が大きいです。
しかしかつては道路事情なども今ほど良くありませんでした。
1950年代後半より、三重県から魚類やその他食料品をなどを背負って近鉄に乗り、大阪で売りさばいた後、別の物資を仕入れて帰る行商人が出現しました。
しかしそこで困ったのが「魚の臭い」です。
確かに通勤電車に乗っていて、生魚の臭いが付いたまま出勤はしたくない。
ならば魚の行商人専用の車両を作っちゃえ、という経緯で「鮮魚列車」が誕生しました。
早朝に宇治山田駅を出発して、およそ2時間半をかけて大阪へと向かい、夕方は大阪から松阪駅まで向かっていました。
車両を汚さないようにブリキのカンに入れていたことから「カンカン部隊」とも呼ばれていたそうです。
しかし時代は進みます。
自動車によるモータリゼーションの普及もあり、全国各地で運行されていた行商専用列車も行商人の減少などで縮小の一途をたどりました。
日本国内で運転されていた行商専用列車としては最後となった近鉄の「鮮魚列車」
そのカラーリングと「鮮魚」という行先表示でなかなかの存在感を出していましたが、2020年3月13日を以て運転を終了し、同時に日本において貸切の行商専用列車の歴史に幕を閉じました。
つまり昨年までは、魚運ぶだけの近鉄電車1編成がバリバリの現役でした。
そうして惜しまれつつも引退した「鮮魚列車」ですが、一般列車の最後部に当該車両を1両繋ぎ、鮮魚運搬列車として運行を開始したのが冒頭の「伊勢志摩お魚図鑑」です。
映像は大阪からの帰りなので、「伊勢志摩お魚図鑑」が先頭になっていましたね。
かつて日本では、お祝いなどの慶事やお正月などに、魚を食べる風習がありました。
しかし同時に、鮮度が命の新鮮な魚は貴重な物でもありました。
三重県から大阪まで魚を運ぶ「鮮魚列車」にも、それだけの価値があったということですね。
しかし時代は移り、スーパーに行けばいつでも魚が買える時代になりました。
たった1両になった鮮魚運搬列車「伊勢志摩お魚図鑑」が見れなくなるのも、そう遠くない未来かもしれません。
香芝市では平日の9時15分頃に通過します。
14両9編成ある新型名阪特急「ひのとり」よりレアです!
見かけたら、その日はお魚を食べてみてはいかがでしょうか。
参考文献
山本志乃『行商列車 <カンカン部隊>を追いかけて』創元社、2015年。
クリエイティブ・コモンズに基づく表記
季節の中で 近鉄 快速急行 松阪行き 『伊勢志摩お魚図鑑』
http://photozou.jp/photo/show/2559722/265458897
近鉄 鮮魚列車 最終章 なんか?間延び。
http://photozou.jp/photo/show/2559722/264965220