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「上手に怒ればいいんです」アンガー(怒り)で後悔しない方法。藤城美幸さんインタビュー。

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「怒っていいの、でも上手にね」。一般社団法人日本アンガーマネジメント協会、初年度最優秀アンガーマネジメントファシリテーター新人賞受賞にも輝いた藤城美幸さんが描く、これからの活動についてお聞きしました。

(取材・文=沖本可奈 撮影=村岡香林、乾佳子)

年間200日以上を海外で。ツアーコンダクターが触れた 人の様々な感情。

ーー旅行プランの相談を受ける上で大切にしていたことはなんですか。

藤城美幸(以下、藤城):まず何にご興味があるかをお聴きしています。あるツアーに添乗した時、ヨーロッパで遺跡をめぐる内容だったのですが、「また石ころかぁ」というお客様の言葉を聞きました。忘れがちですが、価値は人それぞれ違います。同様に南極自然ツアーにおいても、自然が好きな方は目の前に広がる大自然を満喫できますが、関心のない方にとっては「なにもない」と感じます。

雑貨が好きな方ならベトナム、音楽が好きな方ならウィーン。ほぼ全ての国を添乗してきた経験を生かしたプランニングを手がけてきました。

ーーツアーコンダクターをしてどんな出会いがありましたか。

藤城:お客様はもちろん、現地スタッフ、ホテルや航空関係者、ひとつの旅行には様々な人が関わっています。ポジティブな出会いはもちろん、そればかりではありません。ツアーコンダ クターとしてひとりの社会人として、その場でできることはなにか、会社組織とはなにか、人の 集まりとはなにかを知ることで、今の仕事につながっています。

 ーー講師につながるきっかけは。

藤城:社内研修講師として新人や店舗スタッフの教育を担当していました。そのうち、NHK文化センターや証券会社など、外部に講演に行く機会が多くなり、参加者の反応にやりがいを感じるようになりました。

ーー印象に残っている講座を教えてください。

藤城:和泉市民講座(市民大学)でも講座をすることになり、半年間の講座を終えたあと、受講者から手紙が和泉市と私宛にそれぞれ届きました。その方は、ご両親の介護のために往復していた実家で見つけた1枚のチラシがきっかけで受講されたそうです。押しつぶされそうになる自分の毎日だけど、またがんばろう。と自分にも両親にも優しくなれる講座だったの で、ぜひ次回もしてください。という内容でした。私の講座をリクエストしてくださったこともそ うですが、なによりも私の話で人が救える素晴らしさを知りました。

コロナ禍で転身を決意。偶然と行動力が重なり研修講師を専業に。

ーー海外旅行ができない環境に伴い、研修講師に転身するまでを聞かせてください。

藤城:サービス業は「感情労働」と言われます。自分や他人の「怒りの感情」に振り回されて心が悲鳴を上げていた2019年12月、怒り方教室として「アンガーマネジメント」を知りました。すぐに魅力にはまり、ファシリテーター資格取得を決意するのですが、関西での講座は6月まで日程が合いません。それなら、と2月に東京まで行きました。直後に緊急事態宣言が発令されたので、すぐに行動に移してよかったと今でも思っています。

 ーー行動力が次の自分の道を拓くことになったんですね。

藤城:そうですね。あのときの思い切りが全ての始まりでした。アンガーマネジメントとは「怒りで後悔しないこと」。怒る必要のあることは上手に怒れ、怒る必要のないことは怒らないようになること、なんです。決して、怒らないことではありません。怒りは人間にとって自然な感情で、怒りのない人はいないし、なくすことも不可能。怒ってもいいんです。

ーー上手に怒る。名言ですね!

藤城:怒りの本当の原因は自分自身にある「べき」。これを裏切られた時に感じるのが「怒り」で、実は身を守るための防衛感情なんです。時間は守るべき、あいさつはするべき、など、どんな「べき」を大切にしているかは人それぞれです。さらに、同じ「べき」でも人によって程度が違います。人同士がラクになる関係を実感することができました。これからは、この考え方を沢山の人に伝えていこうと思っています。

ーー活動拠点を地元香芝でするなか、香芝市商工会女性部の魅力とはなんですか。

藤城:職場は大阪、過ごす時間は海外の方が長い生活をしていて、香芝市に住んでいながら、香芝のことをなにも知らないことに気づきました。今年初めに受講した「みらい塾」で女性部を知り、いきいきとした起業女性と一緒に活動できることが魅力だと感じています。女性部に入部することで香芝市民講座の講師依頼もあり、来年度の講座に講師としてお話ができることも楽しみにしています。

ーー企業向け講座も増えているということですが、特にどんなことを伝えていきたいですか。

藤城:怒りの感情に支配された職場でのパワハラや、度を超えた悪質クレーム(カスタマーハラスメント)の撲滅です。お客様は神様ではなく、お客様とお店はお互い様です。お金を出す側の地位が高いイメージである今の社会を変えていかなくてはいけません。そのためにも企業向け講座に力を入れ、私のライフワークと言える活動としていきます。

藤城美幸プロフィール

 JTBツアーコンダクターとして修学旅行から政財界サミットまでアテンド。約140カ国訪問、毎年200日前後を海外で過ごし、ダイバーシティに寛容になる。社内最優秀添乗員表彰や、ツアー・コンダクター・オブ・ザ・イヤー委員長賞など数々受賞。社内研修講師歴20年以上、最前線での接客経験をもとにコミュニケーションとホスピタリティのプロを育てる。同時に社外講座も担当し、官公庁や単位クラブでの講演、NHK文化センター等の教養講座、企業セミナー、個別相談、など、大ホールから個別コンサルティングまで対応。周りを明るくすると指名の絶えない人気講師で、オンライン話し方アドバイザーも務める。アンガーマネージメントトレーニングブック2022年版(ミネルヴァ書房)制作メンバー。